Interview with Professionals – キュースポーツとマジカルな関係を持つプレーヤー クリス・メリング

Chris Melling_Learn

ビリヤードのプロになろうと思った瞬間がありましたか?

私が9歳の頃に両親がテーブルを購入してくれたのがとても幸運でした。毎日放課後練習をしていました。3時半から9時、10時くらいまで毎日。私の父がよく土曜日に、母が買い物に行っている間に地元のパブに連れて行ってくれて、何時間もプレイしていました。

ある日私たちはクラブのミニトーナメントに参加したんですが、隣の家の人が参加していました。私が当時9歳か10歳くらいだったんですけど、彼が「スヌーカークラブに一緒に行くかい?」と声をかけてくれました。そこで、スヌーカーでゲームをしました。そのクラブで2〜3週間くらいプレイをして、フルサイズのテーブルで私は68ブレイクしました。その時思いました、「このゲーム、いけるな」って。私の両親が、地元のプールチームとスヌーカーチームに登録をしてくれて、もっと練習するようになりました。

10歳の頃には、103ブレイクできるようになって、14歳くらいの頃には147ブレイクできるようになりました。その時に「プレイはできるけど、スタンダードがなんなのか」わかっていなかったことに気がつきました。良いスタンダードをプレイすることはできますが、ジミー・ホワイト(Jimmy White)やスティーブ・デイヴィス(Steve Davis)のようなレベルの高さになれるかわかりませんでした。

それから、ある人がジュニアプールツアーへの私のスポンサーをオファーしてくれました。ジュニアツアーで私は、イングリッシュ・ジュニア・選手権と世界ジュニア選手権で優勝することができました。ヨーロピアンジュニアファイナルでは負けてしまいました。15〜16歳くらいの時に、イングリッシュ8のプロツアーでプレイするようになりました。それからますますイベントやトーナメントでプレイするようになり、生きがいになっています。

8ボールでの成功はスヌーカーで習得した技術があるからなのでしょうか?

間違いなくそうですね、球を入れるということには役立っていると思います。ロングショットを決めるということは、スヌーカーでいう黒球を入れることと同じで、ミスすべきではないもの。若い時にはポケット台でのロングショットはなんてことないと思ってました。しかし、プレーすればするほど戦術が必要なのは明らかだし、ただ球を入れるだけではないそれ以上のものがあるんです。プレーすればするほどゲームをリスペクトするようになりますし、思っていたよりも難しいことにも気づきます。

最近は多くの素晴らしいプレーヤーがいるので、より警戒しないといけないですね。接戦に負けることが多くなると、負う傷も多くなるものです。若い時には、怖いもの無しだし誰かに恐れを感じることもないでしょう。自分も幼い時、地元の公園で木登りしたりして遊びまわってたころは、高いところも怖くなかったものです、木から落ちて手首を骨折するまではね。今ではハシゴに登るだけでその時の恐怖が蘇るんですよ、結果何が起こりうるか身にしみて分かっているので。

これってポケット競技にも同じ側面があると思うんです。「誰も怖くないし、相手はすごいかもしれないけど関係ないね」と思いながらやってきましたが、経験も増えてくると、もっと守りのプレーをし始めると思いますね。

ビリヤードへのアプローチが変わった試合の衝撃的な瞬間について思い出すことはありますか?

あります。私は19歳だったんですが、イギリスで8ボールのワールドチャンピオンシップの準決勝に進むことが出来たんです。そんなにいいプレイをしていなかったんですが、優勝候補の1人でした。首尾よくプレイをして、いろんな人に勝ち越していて、準決勝で「誰も俺には勝てないだろうな」と思っていました。

準決勝の試合で、半分自分のミスで、半分対戦相手がいいプレイをしたので、負けてしまいました。多くを学びました。もちろん、自信と少しの傲慢さも必要ですが、相手をビビらせようとしてもできない場合の答えを持っているほうがよいでしょう。私はその答えを持っていませんでした。そして私は「試合に負ける」という代償を払うことになりました。

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これからの目標を教えてもらえますか?

私の目標は、8ボールか9ボール、10ボールで世界タイトルを取ることです。この三つの全てで惜しいところまではきているんですが、まだ達成できていません。確かに多くの人はトップ10や20のプレーヤーで私を思い浮かべることすら無いとは思いますが、勝利にとても近いところまできていますし、私自身できると思うんです。

8ボールのタイトルではブレイクアウトができなくて負けました。10ボールの世界タイトルがフィリピンで行われた時も近いところまで行ったんです。チャイナオープンやダービーでの優勝はあるんですが、もっと大きいものが欲しいんです。

(試合当日の練習やルーティンなど)大きな試合前であなたが何か準備することはありますか?

地元のスヌーカークラブに行って、練習をしますが、そんなにたくさんはしません。ここ2〜3年、ポケットでは空クッションがもっとも重要な部分だと思っているので、空クッションを練習します。空クッションから多くを学んだとも言えます。確かに運も少なからずとも関係してきますが、運だけでなんとかなるものでもないです。だから、たくさん空クッションを練習してうまくなる必要があります。

他にはブレイクも練習しますね。ポットは本当にあまり練習しないです。なぜならポットは私の強みでもあるので。

儀式的なものとしては、ジェイソン・ショー(Jason Shaw)やダレン・アップルトン(Darren Appleton)とトーナメントに行きますね。ジェイソン・ショーとは本当に近い間柄なんですよ。ニューヨークにいた時は、ジェイソン・ショーと一緒に練習しますし、トーナメントにも一緒に行きます。一緒に遊んだり、笑ったりします。 私たちを知っている人たちは、私たち2人のことを本当にコメディアンだと思っているみたいです。私たちは2人とも人生もゲームもそんなに深刻に捉えていないんですよ。僕らはそれを乗り越えて、笑って楽しんでいます。それが私が本質だと思っています。

ジェイソン・ショーは公平であることに多くの努力を費やしています。そしてその努力が実際に身になっていることを誰もが知っていると思います。シェイン(・ヴァン・ボーニングとダレン(・アップルトン)が多くのトーナメントで勝利していることについては誰も驚きはしないでしょう。だってそれだけ彼らは努力していますから。でも私たちはお互いからかってコテンパンにすることも好きです。

つい最近、ラスベガスにいた時に、「クレジットカードルーレット」という遊びをしたんです。まぁ基本的にジェイソンやダレンとですけどね。それぞれのクレジットカードを取り出して裏返して、お店のウェイターやウェイトレスに選んでもらうです。そのウェイトレスが選んだクレジットカードの持ち主が食事代を奢るというルールです。だから、自分のカードを選んで欲しくないじゃないですか。ダレンのカードを真ん中にして置いとくんですけど、彼気づかないから・・・。ひたすら払い続ける羽目になっていましたよ。半年くらい食事代払わなくてもよかったですもん。楽しかったですよ。

今まで一番誇りに思えた瞬間を覚えていますか?

プールでのもっとも誇りの瞬間は2010年です。私の母が肺癌と脳腫瘍と診断されたんです。私自身、両親ととても近い関係だったので、本当に辛かった。

チャイナオープンに行ったんですけど、完全に「心ここに在らず」でした。集中できない、考えることすらできない。でもなんとか優勝することができました。母は数週間後に 息を引き取って、悲しさに打ちひしがれました。モスコーニカップへの出場権を得ることはできましたが、もう思考すらままならなくて苦しんでいましたよ。

母を亡くして4ヶ月以内のその年、父も息を引き取りました。母を亡くし、親友を交通事故で亡くし、愛犬も死んで、マネージャーやスポンサーが心臓麻痺で、自分の目の前でなくなって。自分の世界がバラバラになっていくような、2010年はひどい年でした。

12月にモスコーニカップでプレイしていて、チームキャプテンとチームメンバーにその年の出来事を話しました。部屋にいたみんなが一緒に泣いてくれていました。そこで自分で自分に問いかけたんです。「彼らは自分の為に今泣いてくれているんだ。彼らが本当の仲間なんだ。彼らと一緒にこの試合にきてるんだ。わかるだろう?」今までに感じることのできなかった友情を感じて、おかげでモスコーニカップで優勝することができました。

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もし自身のプールのキャリアから消し去ることできるなら消し去りたいような残念に思った瞬間を覚えていますか?

もちろん、ありますとも。本当に消してしまいたい瞬間は、ワールド・チャイニーズ・8ボールチャンピオンシップ決勝戦で負けたことですね。

私は10-4であと1ポイント、21先のゲーム、優勝賞金10万ドル獲得まで19-15のところまできていたんです。間違いなくコーナーに落とせるところに8番ボールがあって、それを狙い構えたところにカメラマンが台の対角、まさに目の前でフラッシュをたいてしまって。バックスイングをしたところでした。

経験上、動作をやめて仕切り直せばよい事を知っていたはずなのに、しなかったんです。結局その最後のボールをとれず、その後も引きずり、試合は19-21で負けてしまいました。忘れ去りたい過去ですね。

次のレベルに進みたいと思っている人たちに、どんなアドバイスをかけることができますか?

20代の誰かと話せるとしたら、できるだけ多くのトーナメントでプレーすることです。さらに重要なこととして、できるだけ多くの練習をすることです。本当にトップレベルに到達しようとする場合、経験は非常に重要です。

もっと若い人へアドバイスをするならば、できる限り練習する、そして学業も疎かにしてはいけないということ。あなたは放課後に練習することができますし、負けたとしてもがっかりしないで欲しい。自分に身の丈にあった目標を設定してください。「自分より上手な特定のプレーヤーを倒す」などのターゲットを設定できる場合は、プレーヤーとしてのモチベーションになり、どんどん上に行くことができます。自分より遥かに腕が良い人を倒そうとするのは難しいですが、それでも負けるたびに学べることがあることを知る必要があります。

また、アルコール、タバコ、薬物は厳禁ですね。ただゴミであり、何の役にも立ちません。あなたをがんじがらめにして、経済的にも肉体的にも精神的にもあなたの人生を台無しにするだけのものです。

できるだけ多くのトーナメントでプレイをしてください。プレイする回数が増えるほど、より良い結果が得られます。最初は気付かないかもしれません。ですが私には起こりました。最初の頃は100ブレイクなんてできませんでした。80〜90ブレイクくらいで100ブレイクには届きもしなかった。でも続けることによって100ブレイクをできるようになって、その後なんども100ブレイクを取れるようになりました。できるんです。

ジェイソン・ショーは常にトップクラスの選手でしたが、しばらくの間、彼は本当に大きなイベントに勝つことはありませんでした。彼はよくやっていたけど、勝っていなかったんです。多くの接戦があり、彼は勝てるポジションに達していたけれども、ものにできていなかった。ですが、彼は勝ち始めるとすぐに頭角を表して、次々に勝ち星を取って行きました。

ジョシュア・フィラーもダレン(・アプルトン)も同じようにしていました。あなたも、ずっと勝ち続けるようなステージを突き進みたいと思うでしょうが、そう簡単に行くものではありません。だから私はあまり落胆しすぎないようにしていますよ。要は、否定的な人々から離れて、批評家から離れて、自分のやりたいことに集中すること。無理のない目標を設定し、それを達成することこそが、私にとっては成功です。

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